鉛筆で演奏し、ゲームを操る

abee22009-03-07

オライリー・ジャパンMake: Technology on Your Time Volume 06に表題の記事を書きました。サブタイトルは「「 世界聴診器」を使って、身近な物と電気を使って遊ぶ。」です。

楽器やゲームを買って遊ぶのは楽しいが、それらを自分で作ることもできる。キーボードの鍵盤やゲームパッドのボタンはスイッチだ。アナログコントローラには可変抵抗器が使われている。これらの電子部品はおなじみのものだが、身近にあるものを使うこともできる。それが鉛筆だ。今回は鉛筆と紙で可変抵抗器を作り、それをリボンコントローラ代わりにしてオルガンのような楽器を作る。最終的にはパソコンにつないでゲームの操縦に挑戦する。

前半は電子工作の話ですが、後半にSqueak Etoysとの連携やOLPC XOとの接続についてもちょっと出てきます。
世界聴診器というのは、単3電池2本分くらいの小さなデバイスで、イヤホンとセンサをつなぐと、その入力に応じて異なる音が出ます。イヤホンの代わりにパソコンのマイク端子につないで、パソコンを制御することも出来ます。
これがIPA未踏ソフトウェア創造事業採択されたのが2003年、旧型商品化が2004年、新型が2006年。ずっと各地でデモやワークショップを行ってきましたが、記事になるのは今回が初めてです。開発した当時はフィジカルコンピューティングという言葉もまだ一般的ではありませんでしたが(英語版のWikipediaPysical computingが載ったのが2005年)、昨今のブームのお陰で再評価されるのではないかと期待しています。現象を音として聞ける点やPC接続時にドライバが不要な点など、ユニークな特徴があり、インタラクティブアートや子供向けワークショップの素材として使えます。
3月26日に発売されますので、よろしければお読みください。

教育用ビジュアル言語「Scratch」が変える"学び"

abee22009-02-10

技術評論社Software Design 2009年3月号に表題の記事を書きました。サブタイトルは「子どもたちが"学ぶことを学ぶ"ための機能と設計理念」です。

ブロックを組み合わせることで処理を作っていく教育用ビジュアル言語「Scratch」は,子どもが「学ぶことを学ぶ」ために設計されています.本稿で,仕様や機能を紹介しながら解説します.

掲載誌がエンジニア向けなのでそういう話も多少ありますが、Scratchの概要や内外の状況をまとめたものになっていると思います。
発売日は2/18ですので、よろしければお読みください。

ふりむけばカエル

abee22009-02-09

ポルトガルではScratchが盛んなようで、ポルトガルテレコムとMITが協力して、専用のサイトが作られています。
ここからポルトガル向けにカスタマイズされたSAPO Scratchをダウンロードできます。SAPOというのはポルトガル語でカエルのことで、ネコがカエルに置き換わり、そのコスチューム集が追加されています。しかし、ベースは同じ1.3.1なので、日本語に切り替えて使うこともできます。
このSAPO Scratchなのですが、あえて日本で使うメリットがあります。それはネットブック対応です。昨年爆発的に普及したEee PCをはじめとするネットブックは、ほとんどが1024x600のディスプレイを使っており、1024x768以上を前提にしているScratchでは画面の下が切れていました。その点、SAPO Scratchは1024x600に最適化されているので問題ありません。画面サイズが変わってもステージの大きさは同じなのでプロジェクトの互換性も大丈夫です。
標準の1.3.1にもポルトガル対応機能があり、ちょっといじれば1024x600になるのですが、エンドユーザには少し難しいので、インストールするだけでネットブック対応するのは便利だと思います。
たぶんこれは、ポルトガル政府のe-Escolinhas計画、そしてIntelが50万台のClassmate PCを供給し、Microsoftがソフトウェアを提供するMagellan Initiativeと関係しています。
政府ぐるみの導入というと、スペインのエストラマドゥーラ州全体でカスタマイズされたLinux(gnuLinEx)が使われ、Squeak Etoysもプリインストールされていたことが思い出されます。日本でもCECが学校向けに配布するOSP基本パッケージ(KNOPPIXベース)にSqueak Etoysが入りました。
すべてのMagellan PCにSAPO Scratchが入るのかどうか分かりませが、これからの動向に注目していきたいと思います。

Etoys vs Scratch

abee22009-02-08

Squeak EtoysとScratchを比較して、「(Scratchは)あまりに使い勝手が良すぎるために、かえって創造性をなくす」という意見を聞きました。私はそのようなことはないと思います。それは公式サイトの32万個の作品からも言えます。
Etoysで、Altキーを押しながらハロを出したり、はめにくいタイルをはめ込んだりするのが創造性ではないのは明らかです。重要なのはそれでなにを作るかであって、使い勝手が良ければ負担が軽減した分をより本質的なものに振り向けられます(使い勝手が悪いほうがよいなら、LOGOに戻るべきとも言えます。目的によってはそれもありです)。指導者の負担も減ります。アランさんが言うように、「ピアノの中に音楽がないように、コンピュータの中にもアイデアはない」訳で、これはEtoysもScratchも同じことです。
EtoysもScratchが違うとすれば、それ自体を分解できるか否かです。よくT型フォードにたとえられますが、Etoysはいざとなれば自分で開けて中身を見たり、改造したりできます(そのため、作品や環境を壊してしまうこともあります)。しかし、Scratchはブラックボックスになっており、開けることができません(反面、シンプルで信頼性は高いです)。これは重要な思想の違いで(メタメディアかどうか)、この部分を狙うのであればEtoysを選ぶべきと思います。ただ、それが必要になった時点で、ScratchからEtoysへステップアップする方法もあります。
また、Scratchに用意された豊富な画像のサンプルを安易に使ってしまい、ネットからコピペして論文を書くような思考停止につながるのではないか、との意見もありました。
私はScratchのサンプルは、特に導入時に有効だと思います。最初に絵を描いてしまうと、それが楽しくてなかなか先に進めません。また、絵が苦手な子はそこで止まってしまいます。他のペイントソフトとEtoysやScratchのようなソフトが違うのは、スクリプティングの部分ですから、そこに注力したほうがより有意義でしょう。
確かに安易なコピペは禁物ですが、サンプルは「それを使って何を作ろうか」という話なので(サンプルを開いただけではなにも起こりません)、まったく違う話だと思います。たとえば、Etoysでも「みんなでたのしくスクイーク」のワークショップのようにサンプルを活用することで効果を上げている事例もあります。
絵を描きたい子は放っておいても絵を描きますし、ScratchのペイントツールはEtoysのものよりよくできているので、その子たちにとってもよいと思います。

スクラッチ アイデアブック

abee22009-01-19

以前から何度も紹介しているScratchですが、1/25に日本初のScratchの本が出版されます(一部大手書店では先週末から店頭に並んでいるそうです)。

スクラッチ アイデアブック
ゼロから学ぶスクラッチプログラミング
発売:カットシステム
ISBN:978-4-87783-217-9
税込2,940円《税抜2,800円》
石原 正雄 著
CD-ROM ×1
発売日:2009年01月25日
サイズ:B5変型判
ページ数:192

著者の石原さんはMindStormsやPicoCricketで有名なラーニングシステムの社長さんです。私も原稿を少し見させてもらいましたが、子供にも分かりやすい入門書だと思いました。外部センサのPicoBoardの説明も入っているのがうれしいですね。
山本徹さんの「スクイークであそぼう」が日本におけるSqueak Etoys普及の決め手になったことは間違いありません。いくらネットが普及したと言っても、学校や家庭では紙の本の存在は重要です。この本もそのようになることを期待しています。

今年のG1G1は12月31日まで

OLPC公式blogの情報によると、2008年のGive One Get Oneプログラムは太平洋標準時の12月31日で終了するそうです(日本時間の1月1日 17時)。友達や代行業者に頼む予定の人はお急ぎください。ただし、純粋な寄付(Give One)と大量の寄付(Give Many)は今後も継続します。