ミッチさんの話

ミッチ

今日、ラーニングシステムと埼玉大学ものづくり教育センターが主催したミッチェル・レズニック教授の講演会に参加して来ました。
ミッチさんはMITメディアラボLifelong Kindergarten(生涯幼稚園)というグループを率いている人です。レゴ・マインドストームの開発者と言ったほうが通りがよいかもしれません。
マインドストームはレゴを使ったプログラミング可能なロボットの名前として知られていますが、もともとはシーモア・パパートさんの本(isbn:4624400437)の名前でした(この本はコンピュータを使った教育を志す人は必読です)。このことから分かるように、ミッチさんはパパートさんの弟子、つまり、ばりばりの構成主義者です(構成主義については以前に書きかけて、そのまま放置)。
今回、ミッチさんが最初に話したのは積み木のことです。幼稚園で子供たちが積み木で遊ぶとき、まず何を作ろうかと考えます。たとえば、家とかですね。そして、それを組み立てて遊びます。かっこいい家ができたら、それを友達見せて一緒に遊びます。協力して改造するかもしれません。どんどん高くしていくのは面白いチャレンジです。しかし、高くしすぎると崩れてしまうこともあるでしょう。そして今度は失敗しないように再チャレンジします。もしそこにファシリテータがいたら、現実のビルディングの写真を見せるかもしれません。子供たちはそれを見て、高くするためにはどうすればよいのかを見つけます(土台のほうが太くなっているとか)。そして、また組み立てては遊び、共有して考えて・・・という流れを繰り返します。
ミッチさんはこのような子供たちの遊びに注目すべきだと言います。これを分析すると、IMAGINE→CREATE→PLAY→SHARE→REFLECT→IMAGINE→のサイクルが見つかります。このサイクルをうまく支援する道具があれば、子供たちは遊びながら自発的に学べるようになるかもしれません。
そのようにして作られたのが、マインドストームであり、今回紹介されたピコクリケットです。ピコクリケットマインドストームに比べて、より原始的で単純な素材と部品から構成されていますが、だからこそ柔軟性が高いといえるかもしれません。つまり、「ロボットのようなもの」を作るという暗黙の方向性がないので、より間口が広いものになっています。たとえば、男の子が好きなライントレースカーに興味がなくても、なでると鳴くネコなら興味を持つ女の子もいるでしょう。しかし、このふたつは同じ仕組み(センサによるデバイスの制御)でできているのです。子供たちは、光センサの数値がある閾値を越えたとき、特定の処理を実行するプログラムを書かなければなりませんが、それを勉強だとは決して思わないでしょう。
次に紹介されたのがScratchというシステムです。マインドストームやピコクリケットが実世界を扱うのに対して、Scratchはコンピュータの中にあるバーチャルな世界を扱います(オプションでScratch Boardというセンサを取り付けることもできます)。そのメリットは、より自由度が高いこと、楽器やアニメーションなど、より多くのメディアを簡単に扱えること、そして、出来上がった作品をインターネットを通じて世界中の子供たちと共有できることです。ScratchのWebサイトには約7万の作品がアップロードされており、今も続々と追加されています。作品は言語と独立なので、ドイツで作られた作品を参考に、スペインの子が改良することもできます。Scratchはこのサイトから無料でダウンロードでき、近々日本語にも対応します(私もお手伝いしています)。
以上のような、ミッチさんの考えとそれによって作られた教材はOLPCの学習に対する考え方と一致します。なぜXOがネットに接続されなければならないのか、なぜすべてのアクティビティが共有できるように作られているのか、なぜLOGOやSqueak Etoysがプリインストールされているのかは、すべて同じ理由、すなわち、コンピュータを強力な積み木として使えるようにするためです。
Scratchは将来のXOに搭載される予定です。